2016.3.2.公開シンポジウム開催報告 / IRIS


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公開シンポジウム
「電子書籍の出版・流通と図書館の課題——読書アクセシビリティを中心に」開催報告


    登壇者
    石川准(静岡県立大学教授、内閣府障害者政策委員会委員長)
    植村八潮(専修大学教授)
    今川拓郎(総務省情報流通行政局情報流通振興課課長)
    松原聡(東洋大学副学長、一般社団法人電子出版制作・流通協議会アクセシビリティ特別委員会委員長)
    松原洋子(立命館大学教授、R-GIRO研究プログラム「電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究」代表)
    盛田宏久(大日本印刷株式会社 hontoビジネス本部 教育事業開発ユニット企画開発第2部)
    湯浅俊彦(立命館大学教授)


    プログラム
    第1部 報告(司会:湯浅俊彦)
    報告1: 松原洋子「電子図書館のアクセシビリティ向上の取り組み――兵庫県三田市立図書館の実証実験を中心に」
    コメント:盛田宏久

    報告2: 松原聡「電子書籍のアクセシビリティ向上の取り組み――(一般社団法人)電子出版制作・流通協議会『書籍のアクセシビリティを 推進するためのコンテンツ及び電子書籍リーダーの制作手順等に関する調査研究』を中心に」
    コメント:石川准

    第2部 パネルディスカッション
    司会:松原聡
    パネリスト:石川准、植村八潮、今川拓郎、松原洋子、盛田宏久、湯浅俊彦

    本公開シンポジウムでは、第1部で主催者であるIRISメンバーから、電子書籍と電子図書館のアクセシビリティをテーマとする報告をし、 第2部ではアクセシブルな書籍の提供に向けた図書館の取り組みや課題、電子書籍の出版と流通等について、 産官学の登壇者によるパネルディスカッションを行いました。約100名の参加がありました。

    第1部報告1では、IRIS代表の松原洋子から、2015年1月~3月に三田市立図書館で 実施した電子図書館アクセシビリティ実証実験について、 実施の背景、結果の概要と今後の展望に関する報告がありました。それを受けて、実証実験に用いた電子図書館システムの開発に関わる盛田宏久氏からは、 視覚障害者が独力で利用できる電子図書館サービスを目指し、まずはPC版、次いでタブレット版を発表する旨の発言がありました。

    報告2では、IRIS分担研究者の松原聡氏が、電子書籍の誤読のない音声読み上げ実現のためのSSML(発音、音量、ピッチ、速度などを制御する規格) の付与ならびにSSML対応の電子書籍リーダー制作について、総務省・電子出版制作・流通協議会の実証研究の報告を行いました(報告書はこちら) 。 これに対し、IRIS分担研究者の石川准氏から、製作における時間的・金銭的負荷が課題であり、現状ではデジタル教科書のような国の支援を仰ぎやすいコンテンツに対してのみ有効であろうというコメントがありました。

    第2部のパネルディスカッションでは、「図書館のアクセシビリティ対応」と「電子書籍のアクセシビリティ」をテーマに、アクセシブルな書籍の提供に関わる仕組み作りなどについて議論しました。 植村八潮氏からは、 図書館利用者のニーズと出版社の提供するコンテンツに相違があったことや、このような問題を想定した電子図書館製作を期待する旨のコメントがありました。 また、盛田氏ならびに湯浅俊彦氏から、図書館利用者のニーズに応じて事後的に図書を購入する「ライセンス型」システムの導入によって課題解決を行う可能性について提示がありました。 今川拓郎氏からは、 米国のクローズドキャプションを例に、多くの人々が協力でき、長期間継続できる環境整備の必要性についてコメントがありました。

    会場からも、図書館や情報保障に関わる様々な関係者や利用者の皆様それぞれの立場から、貴重な質問やコメントをいただきました。 電子書籍のアクセシビリティを実現する上で多くの課題が浮き彫りになる有意義なシンポジウムになりました。


登壇者の写真


会場後方からの写真